2007年07月13日

No.421 Gちゃん襲来

 昼休み。
 久々に外食(といっても吉牛ですが……)を終え会社に戻ると、ロビーに見知らぬおじいちゃんが座っていた。
 何をするでもなく、ぼんやりと杖を両手で持って支えながらあらぬ方向を眺めているおじいちゃん。
 独特の雰囲気を漂わせ、周りと時間の流れが違うかのようにゆるやかな空間を演出している感じ。
 そのおじいちゃんが、不意にこちらを向いたので、私とぱちりと目が合う。
 私は年長者に対しうやうやしく頭を下げ会釈し、あまりジロジロと観察するのも失礼なので、仕事場に戻ろうとしたのだが……

「あー、そこのニイさん、すいません」

 がっちりキープされてしまう。
 それを無下にあしらう事など出来ない私は...

「なんでしょう?」

 と、精一杯の営業スマイルとともに、おじいちゃんの傍に行き聞き耳をたてた。
 しかし、おじいちゃんの次のセリフは、私の魂を凍りつかせたのである。

 おじいちゃん、杖を持った手をぷるぷる震わせながら...


「ワシの家、どこじゃったかのぅ?」


 ・
 ・
 ・

 などと言い出した。

「……はぃ?」

「ワシ、自分の家にどう帰るか、忘れてしもうた」

「ぇ、ぇえええ!?」

 迷子かよ!
 つか、なんで迷子のおじいちゃんがうちの会社のロビーに腰かけてんだ!?
 改めて身なりを確認すると、小ざっぱりとした姿からホームレスの人というわけではなさそうで一安心。

「おじいちゃんはどうやってここまで来たんですか?」

「……そもそもここはどこじゃろう?」

「えーっと……」

 とりあえずわが社の名を告げ、住所を言ってみるのだが……。

「はぃはぃ」

 と、非常に要領を得ない感じで頷くのみ。

「おじいちゃんの家はどこにあるんですか? 住所とか」

「さぁ、どこじゃったか……」

「えっと、えっと……(混乱中)」

 とんでもない子猫を拾ってしまった。
 どうすればいいのだ、こういうときは!?
 ふと周りを見渡せば、昼休みを終えた受付のみっちゃんとバッチリ目が合う。

「みっちゃん!」

「はい?」

「ここのおじいさん、自分の家がわからないそうなんだ! どうしたらいいと思う?」

「は?」

 みっちゃんをあっさりと巻き込む私。
 しかしみっちゃんは知っていたのだ、この人のことを。
 みっちゃんは厳かに言ったのである。


「前社長ですよ、その方」


 どどーん……。


「ちなみに現社長の父上です」


 そうきたかーっ!!!
 つまり、このちょっとトボケたご老人は、このビルの会社の主なのです!!
 びっくりした……。

「みっちゃん……後任せた」

「心得ました!」

 どうやら、前社長は度々こういう風にロビーでたたずんでいるそうで。
 その度に受付のみっちゃんは、社長の秘書さんに連絡を取って迎えに来るそうだ。
 んーむ、この会社、ようわからん。

 そんな昼の一幕。
 その後、秘書さんがこのご老人を送ったのかどうかは私は知らない。
posted by BlueTasu at 04:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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