2007年06月19日

No.404 地獄行き麻雀(ある意味極楽)

 草木も眠る丑三つ時――の2時間前。要するに午前1時半。
 終電も過ぎてしまい、会社に泊まりこみ決定となった。
 恐ろしいまでのハードスケジュールを一旦終えた男たちは、何を思ったのか?
 人は極限まで追い詰められると何をしでかすかわからない。
 普通なら我々の選択肢はただひとつ。

 明日に備えて寝る

 これしかない。
 毎日毎日朝から深夜まで働き詰め。
 休日なんてありゃしない。
 そんな中訪れたつかの間の休息時間。
 眠って体力を回復させるのが吉と言うものだ。

 ――が

「おい、麻雀やろうぜ……」

 なぜか先輩が青い顔で言った。
 その先輩は恐ろしいほど麻雀の強いお方で、

「履歴書の特技・趣味のとこに麻雀って書いた」

 という伝説の男である。
 ちなみに私は

「競馬」

 と書いた。
 特技ではない。当然趣味という意味だ。
 にしてもマイナスイメージしか浮かばないこの趣味・特技で、この会社に採用されたのか?
 それは恐らく永遠の謎である――謎にしておきたい。

 ともあれ我々極限状態。
 そんなもんに付き合ってられるか、と思ったのだが...

「そういやしばらくやってないですね」

 などと隣にいた新人のくまさんが言ったもんだから、俄然やる気になる先輩。

「でも明日も仕事早いっすよ?」

 と一応現実を見ようよ、と諭す私。

「明日!? ちゃうやろがっ! もう今日やんけ! 日付かわっとるがな!! 俺はもう何日も麻雀やっとらんのじゃ! 麻雀分が不足しとんねん! 麻雀分足らんと栄養失調で倒れてしまうがな! だから付きあえや!!」

 ……麻雀分ってあるんだ。
 どうやら先輩にとって麻雀とは、己の体を潤す水分と同様のようである。

「3人麻雀ですか?」

 そう、1時で仕事が終わった時点で倒れこむようにして仮眠室に逃げ込んだ者や、家路についたものが数名。
 バイトは23時であがっちゃったし、女子は終電前に帰っている。
 今会社に残っているのは私とくまさん、それと先輩だけだ。

「ええがな。関西人はサンマ(3人麻雀のこと)大好きやど!」

 というわけで、過労のため死相の出た先輩と私、そして巨体を揺らしながら疲れを感じさせない新人、くまさんの3人は休憩室へ。
 ここには昔ながらの、裏返せばラシャ張りになるテーブルがあるのである。
 麻雀牌は先輩のロッカーにはいっていたものを使用。

「……なんでロッカーにそんなもんいれてるんですか?」

「ちょっとな……」

 ちょっとってなんだよ……。
 ともあれ、準備の良い先輩のお陰もあってか、深夜の麻雀大会が始まったのである。

 そして、そこでくまさんは言ったのでした。

「牌持つのって、初めてなんですよね〜」

「な、なにぃいいっ!!」

 曰く、彼はゲームでしか麻雀をしたことがないらしい。
 当然牌のとり方もわからない、ある意味素人だが……。

「役とかはわかりますんで、なんとかなるでしょ?」

 と、本人まったく気にせず。
 が、牌を持つ手が危ういわ、持ち上げるのもままならず1つずつ積み上げていったりで結構手間。
 なんつーか、素人が一人混ざっているようで非常に居心地が悪い。

 ――しかも、一局目早々……

「チーっす」

 と、先輩の捨て牌で鳴く くまさん。

「どあほっ!! サンマはチーなしじゃっ!」

「え、ええッ!? あかんのですか!?」

 ゲームでは4人なので、3人麻雀のルールを知らず速攻ミス。
 まぁいいけどね……と思ったら。

「あ、それロン。あがりです」

 8巡目。あっさり先輩からアガるくまさん。
 その手は……。

「清一色、三暗子で倍満です」

「……マジか?」

 ちなみに親はくまさん。
 24000点直撃喰らって速攻瀕死の先輩。
 しかも...

「リーチです」

 次のくまさん、第一手。
 いきなりリーチでダブルリーチだ。

「……マジか?」

「マジっす」

 くまさん、ツキすぎ。

「ロンです。ダブリー、一発、ドラ2で満貫です」

「……ハコテンだよ、こんにゃろうっ!」

 先輩、速攻沈没……。
 私、なんにもしてないんですけど……。


 そして気を取り直しての2戦目。
 くまさん、ここで伝説となる。

 一局目は私のメンタンピンの3役で先輩の親をサクっと流し、親がくまさんになった二局目。

「あれ?」

 配牌してから並び替えていると、素っ頓狂な声をあげるくまさん。

「すんません、アガってます」

 そう言ってザクっとオープン。

「……天和かよ」

 はい、役満ですよー……。
 親のツモ上がりなので16000点ずつ進呈。

「いやぁ、天和って初めてですよ」

「そーかよ」

 だんだん声が荒んでいく先輩。
 仕事も激務で、趣味・特技の麻雀にすら裏切られてしまうのか!?
 くまさん親で二局目、二本場。

「リーチっす」

「ま、またダブルリーチかよッ!!?」

 くまさん、再びダブルリーチ。
 天和のあとでダブルリーチとは……。

 ざわざわざわ。
 なんだかそんな効果音が良く似合う。
 いや、そんな場合でなく……。

「あ、ロンっす」

 3巡目、再び捕まった先輩。
 ちなみに切ったのは字牌。
 先輩を攻めることは出来ないだろう。

「ダブリー、チートイツで9600点っす」

「……ダブリーでチートイツかよ。ぎりぎり払えるな……」

「あ、裏ドラのってました。ハネ満っす」

「じゃあハコテンだよ、こんちくしょうっ!!」

 帽子を地面に叩きつける仕草をする先輩。
 あんたは上島竜平か。
 で、ふと気付く。

「……俺、1回も親やってないんですけど」

「俺は1回もアガってねぇよ……」


 そんなこんなで先輩の口から何かはみ出し始めた第3戦目。
 そこでくまさん、伝説を神格化する。

 一局目。

「ロン、それロンだ!!」

 先輩が嬉しそうにアガる。
 が、役牌だけなんですけど……。

「先輩、サンマは2ハン縛りのハズじゃ……」

「んな地方ルール、言ってねぇっ!」

「まぁ、そうですね……」

 先輩、どうやらなりふり構わなくなってきた――が。

「ポンです」

 と言って白をポンするくまさん。

「それもポンです」

 と言って発をポンするくまさん。

「カンです」

 と言って中を無意味にツモカンするくまさん。
 で、そのカンで引いた牌で――

「ツモ! 嶺上開花です!」

 と、アガるくまさん。

「その前に大三元になってる時点でカンの意味ねぇッ!!」

 普通、中を切って大三元はない、と安心させて直撃を期待するよなぁ……。
 つか、サンマとはいえ3戦して役満2回目かよ……。
 
 と思ったら...

「ポン」「ポン」「ロン」

 と続けざまにアガった役が...

「大三元、字一色……だ、ダブル役満だとぉおおッッ!!?」

 くまさん、憑きすぎ……。
 ちなみに直撃したのは先輩だと言うのは言うまでもなく……。

「ハコテンじゃああああッッ!!」

 先輩、3連敗……。
 くまさん、アンタってヤツは……。
 結局この後3戦したが、私がトップ1回とっただけで、あとはくまさんの独壇場。

「先輩、6連敗はヤバイっすよ……」

「……やめる、俺もうやめる」

「そうっすね、今日はもうやめといたほうが……」

「もうこんな会社、辞める……」

「えええ!? そっちかよ!! イヤだぁ、今この会社辞めちゃイヤだぁッ!!」

 ・
 ・
 ・

 まさか本当にこれで先輩が辞めるとは思いませんでした。
 まぁこの麻雀に関係なく、辞表は提出していたようですが……。
 これが決定打となったのかどうか? それを聞くことはもうできません……。



posted by BlueTasu at 05:30| Comment(2) | TrackBack(0) | ゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
恐ろしいビギナーズラックですね
天和の確率は数十万分の1らしいですから
やばいですね。。
なにかが狂うとそうなるのでしょうか^^;
Posted by グリフ at 2007年06月20日 04:37
 どもグリフさん、返信遅くなって申し訳ない。

 くまさんはゲームではかなりの打ち手のようで、アーケードでランキングがどうのこうのと語っていました。
 なのでビギナーズラックはちと違うかな。
 にしても、恐ろしい引きでした。
 こっちは青ざめっぱなしでしたからね。
 全く何もできずに終わってしまう局ばかりで、イカサマしてんじゃないかとマジで疑いましたよ。
 天和なんて、ツバメ返しでも使ったのかと……。
Posted by BlueTasu at 2007年06月23日 04:24
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