2007年05月07日

No.378 仕事場はパーティ

 なんでこんなことになったのか?
 よくわからないけど、これはたぶん誰かの陰謀で、それに踊らされる小市民な自分はとても不幸だと心からそう思った。
 話は何日前だったか忘れたけど結構遡る。たぶん。
 例によって営業の古木さんが発端だ。
 と言っても別に今回は何かミスをしでかしたわけはない。
 うん、古木さんだって毎日毎回ミスしているわけないもんな――と思ったら、なんか横でくしゃみしたら鼻水が垂れていて、妙齢の女性としてそれはどうなのよ? と言いたくなる。

「なんだか場違いな感じですね」

 鼻水を拭きながら彼女が言う。
 ちなみに鼻水を拭いているハンカチは、先ほど彼女がこぼしたジュースが服を濡らした際に貸してあげたハンカチだ。
 返して、と言おうと思っていたが、もういらない、と思った。

「まぁそうですね」

 あれはハルちゃんに貰ったハンカチなのに、失敗した……と思いながら私は適当に返答した。溜息と共に。

「ほんと、そうですよね……」

 古木さんは私の溜息を別の意味で感じ取ったようだ。
 違う、ハンカチだよ。私が溜息をついたのはハンカチのことで、だよ。
 でもまぁ溜息もつきたくなる。
 なんだってこんな場所に自分がいるのか?
 さっきも言ったが、それは数日前に遡る。というか、いい加減遡ることにする。

 ――――――――――――――――――――――――――――

「古木が担当している営業先の会社が、このたび30周年を迎えた」

 部長が部下を全員集めてそう言った。
 ちなみに私もその部下の1人だ。

「そこで、関係者等を招いてパーティを行うらしい」

 そのときは他人事のように 「へぇ」 と心の中で呟いたもんだ。

「それに社長と秘書、それと担当の古木、それからあと1人行くことになった」

 つまり、我々の中から一人、選ばれるらしい。
 このクソがつくほど忙しいこの時期に、1人でも欠けるという事実はかなり痛い。
 しかし我々は会社の意向とかに逆らうことが出来ない忠実なる僕。
 1人派遣しろと言われれば従うほかない悲しい中間管理職なのだ。

「で、誰に行ってもらうかなんだが……まぁ実際誰でもいいんで、行きたいものはいるか?」

 そんなの、絶対行きたくないに決まってる。
 仕事が山積みなのだ。
 そんなのに出ているあいだに、山が崩れてもまだ積み上げられるほどになるに違いない。

「そうか、なら仕方ないな。じゃあここはひとつ、恨みっこなしでクジで決めることにしよう」

 返事がないのをあらかじめ予想していたのだろう。
 部長は準備よく用意していた箱を取り出した。
 そこには丁寧に畳まれたクジが入っている。

「ひとりずつ順番に取り出し、その場で広げろ。その紙が白紙なら行かなくていいぞ」

 というわけで引かれていくクジ。
 我が部署には20数名の人間がいるわけで、当選確率は1/20以下。
 まず当たるはずのない確率だ。
 だが、確実に1人当たるものがいるわけで、1/20の1回が最初に来てしまう運のない奴がこの中にいるはずなのだ。

 ・
 ・
 ・

 まぁ、話の流れからわかるように、その運のない奴って私なんだけどさ……。
 白紙ではなく、「逝ってらっしゃい」 と本当に書かれていたりする紙を手にとってしまったのである――私が。

「ブルータス……古木のエスコートを頼んだぞ」

「いやだああああああああああああっっ!!」

 その絶叫は下の階にいる古木さんの下には届いたのか届かなかったのか?
 ともかくそんなくだらないクジのせいで、30周年パーティとやらに出席する羽目になったのである。

 社長とその秘書さんはさっさと顔なじみの企業さんとお喋りに興じている。
 つか、社長の秘書とか始めて見たのだが、美人なスラっとした人を想像していたら肩透かしを喰うほどのオバサンであった。がっかり。
 なのでそれはおいといて、私と古木さんは最初こそ、30周年を迎えた顔馴染みの企業さんに挨拶されたのだが、あとはほったらかし。
 ホテルの借り切ったホールでウロウロしているといった具合だ。
 シャンデリアがきらきらして眩しい上に、回りも煌びやか。
 料理も立食パーティらしく、適当に盛り付けてあるけれど、あんまりお腹は空いていない。
 つか緊張しすぎな古木さんがジュースをこぼすわ鼻水を垂らすわ人の足を踏んでくれるわ、飲み物を運んでいるボーイさんにタックルかますわでもう無茶苦茶だ。
 一緒にいなければいいのだが、よっぽど心細いのか、無言で私についてくる。まさに小動物。つか、怖いから。

 つか、暇だ。
 何もすることがない。
 おもむろに端っこの椅子に座ってPSPを取り出し、モンハンでもやりだしたい気分なのだが、さすがに会社の看板を背負っている以上、それはできない。
 つか、持ってきている時点でダメな気もするのだが、持ち物検査とかされる学校というわけではないので問題なかろう。うん。

 結局、4時間続いたこのパーティ。
 終始気まずいというか、居た堪れないというか、そんな居心地の悪さを感じながらすごしたのでありました。

 ――で

 帰ったら当然の如く、山が崩壊してその上にまだ放り込まれているかのような仕事の山がそこにあったわけで……。

「うけけけけ、やってられっけー!」

「ああ、ブルータスさんが壊れたッ!? ……でも次の書類、早くまわしてくださいね」

 壊れさせてもくれないのでありました。
 現実って痛い……。

 それからハンカチも返って来ませんでしたとさ。
 古木さん、絶対私から借りたこと忘れているな……。


posted by BlueTasu at 23:31| Comment(2) | TrackBack(0) | 日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あまり上下関係を意識する場所に出くわした経験がないクリスですども。つか中学生の時も部活は美術部でなおかつ上級生二人、僕らが10人くらいいたので発言権はなかったし、高校も夏休みまで持たなかったしで、

要は集団生活に向かない

性格なんですよね(^^;。でもそんなに行きたくないパーティなら先方に「二人になった」とか言って断るわけにはいかなかったんですか?自分ならザックリそうしちゃうけどなぁ。
Posted by クリス at 2007年05月09日 14:16
 クリスさん、コメントさんくす。

 何事も経験だ、言って来い! とのお達しでして……。
 当たりクジ(つかハズレクジ)を引いた瞬間、血の気が引くのがわかりましたよ。
 ざぁーっと、ね……。
 断れない状況というか、断れないのがサラリーマンの辛さでして、こればっかりは仕方ないですな。
 ザックリ断れば、きっとサックリやられちゃってたでしょうし、給料明細辺りか、ボーナス査定がさ……。

 集団生活に向かない、というクリスさんの自己分析にはちょっと納得。
 確かに言っちゃ悪いけど、浮きそうな雰囲気があります。
 逆に私はあんな姉をもったので、周囲に溶け込む術、というのを生まれながらにして身についてしまったような気がしています……。
Posted by BlueTasu at 2007年05月10日 03:57
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