2006年07月19日

No.113 わらの犬

 まずはこれをお聴きください。

 

 そう、街は雨、雨、雨なのです。
 だというのに、ここに傘を会社にど忘れした馬鹿がいます。

「あー……どうしよう」

 もちろん、その馬鹿とは私の事なのですが……。
 駅前でポツンとたたずむ私。
 家までは約20分。ずぶぬれを覚悟すれば問題はないのですが、さすがにスーツをズタボロにするつもりはありません。

「さて、どうするか……」

 まずは家に電話することにしました。
 父が家にいれば迎えにきてくれる……かもしれません。

 ――トゥルルル・・・トゥルルル・・・ガチャ。

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「あ、俺やけど」

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 ……私とわかった瞬間、思わずフォントを変えて表現したくなるほど口調が変わる姉。
 なんというか、すでに及び腰になってしまいそうである。
 しかしここでぐずぐずとまごついていては姉の機嫌を損ねてしまう。
 私は単刀直入に、素早く用件を切り出した。

「傘忘れて駅で待ちぼうけ喰らっちゃったんだけど、親父いる?」

「親父ならワシの足元で寝とるわ。酒しこたま呑んどったぞ。蹴り起こしたろか?」

「いや、それはいい……」

 姉に本気で蹴られたら二度と起きることはできないだろう。

「ちっ、そうか。で、用件はそれだけか?」

「それだけっす……」

「最近ワレは根性はいっとらんからな。ちょうどいい、気合入れて走ってかえってこいや!」

 ガチャ、ツー、ツー、ツー……。

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 状況変わらず――というより、雨は一層激しさを増していた。
 さて、どうしよう……。

 と、思い出した。
 今日はアイツが非番で休みじゃないか!
 私は一縷の望みにかけ、奴の携帯に電話をかけた。

 ――トゥルルル・・・トゥルルル・・・ガチャ。

「なに?」

「タカか!? すまんが駅まで迎えに来てくれ! ずぶ濡れになるのはイヤだ!!」

「今からか!? 今何時だと思ってんだ!」

「夕方の6時やん! 普通やん!!」

「悪ぃけどさ、今レベル上げに忙しいんだよ」

「悪すぎるわ!! 中断すりゃいいじゃねぇか!!」

「えーでもなぁ・・・面倒くせぇよ」

「頼むよ、今度アンパンのゴマおごっちゃうから!!」

 ガチャ、ツー、ツー、ツー……。

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 ・

 冗談のわからない奴である。
 つか、友人のピンチより己のレベル上げを優先するとはなんて奴だ。
 今度セーブ中にメモリーカードぶっこ抜いてやるからなっ!

 ……などと復讐に燃えていても状況は好転しない。
 雨は激しさを増すばかりである。
 さて、どうしたものか。
 最悪、タクシーを使うしかないか? と思ったときであった。

「アンタ、困っとるみたいだねぇ」

 見知らぬおばあさんに声をかけられた。

「ええ、ちょっとこの雨は止みそうにないですよね」

「アタシの旦那がもうすぐ迎えに来るから、なんだったら一緒に乗っていくかぃ?」

「え!? いや、そんなの悪いですよ」

「ええてええて。若いモンが遠慮なんてしとったらあかんよ。お爺さんはね、昔タクシードライバーやったからね。腕は確かなのよ」

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 と、結局人のいいおばあさんと意気投合。
 親切な人に送られて、無事帰途につけたのでありました。
 うん、世の中いい人もいるもんだなぁ。


「ただいまー」

「……なんやワレ、平気なツラしおってからに。走って帰ったんとちゃうんかぃ!?」

「いや、親切なおばあさんの車にのせてもらって・・・」

「ああ!? ワレはそうやってすぐに楽なほうへ楽なほうへ逃げようとするな! わかったわ。その根性、たたき直したろっ!」

「ちょ、まって! 今帰ったばっかりで疲れて・・」

「じゃかあしぃっ! ピーチクパーチクほざくな、阿呆がっ!!」

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 爪の垢でも煎じて飲んでほしいものです……。




posted by BlueTasu at 01:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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