2006年06月21日

No.87 竜王様

 それは一種異様な光景だった。
 平日の昼だというのに居間には4人の兄弟、全員が勢揃いして昼ご飯の冷やしそうめんをすすっている。

 私は本日、仕事は休み。
 姉は本日、非番で休み。
 弟と妹は、本日学校が半日授業のためすでに帰宅。

 外は降り止まぬ雨。
 周囲は田んぼのため、カエルの大合唱が雨音よりも五月蝿かった。

「うっとおしぃ雨やのぅ。じめじめしてほんまかなんわ。だから梅雨ってイヤなんじゃ!」

 ――否、姉の方が五月蝿かった。

「しかし暇やのぅ」

 姉はうちわでバタバタと自分に強烈な風を送り込みつつ、楊枝で歯に挟まった何かを必死にほじくり返していた。
 なんつーか、非常にだらしがないというより、オヤジ臭い。
 が、姉は意に介した様子もなく、ボソリと言った。

「なんか遊ぶか」

 この瞬間、私の休日はつぶれた。
 姉の 「なんか遊ぶか」 とは、私視点で言えば 「遊びに絶対付き合わされる」 ということである。
 ああ、できれば つよきす をクリアしてしまいたかった……。
 私がうな垂れているのをよそに、姉や弟たちは何をして遊ぶかを話し合っていた。

 で、結局4人で遊べたほうがいいだろうということで、2階からPS2を持ってきて居間のプラズマテレビに接続。
 ソフトは 『いただきストリートSP』 であった。

 いただきストリートSP、通称 『いたスト』 はボードゲーム。
 キャラの駒とマップがドラクエとFFのモノポリー、と思ってもらっても間違いではない。
 土地に店を建て、1周してマークを集めてサラリーを貰い、株を買い、店を増資し、株価をあげてとにかく儲けたもんが勝ち! というゲームである。

「姉ちゃん、いたストやったことあんの?」

 私と弟と妹はたまに一緒にやっていたのでその実力は知っているが、姉は未知数。
 一緒にゲームするということ自体珍しいのだ。

「妹と何回かやったな」
「おねえちゃん、結構強いんだよ」

 ふぅん。
 ……って、ちょっと待て。
 いたストは私のだし、PS2は私と弟の2台あるだけである。

「人の部屋から勝手にもっていってやってたな!」

「この家のものは全部ワシのもんじゃ! ワレ、なんか文句あんのか?」

「……ありません。ありませんが一言くらい言っていただけると幸いです」

「まぁ善処したろ」

 姉はジャイアンより横暴であった……。
 そんなこんなでゲームスタートで、まずはキャラクターを選択。

 1P、姉は竜王を選択。なんつーかピッタリすぎる。
 2p、弟はDQ2の主人公、ローレシアの王子を選択。私のマイキャラである……。
 3P、妹はDQ2のムーンブルクの王女を選択。犬が好きなのが理由らしい。
 4P、私。マイキャラであるローレシアの王子をとられたのでしばし黙考。
 見渡せばみんなDQキャラ。私もそれに倣うことにし、スライムを選んだ。
 すると姉は顔をしかめて言い放った。


「お前は現実でもゲームでも雑魚キャラなんか? 現実でもゲームでも経験値 1 か?」


 ……。
 驚愕の新事実である。
 そうか、私は現実ではスライム並みの扱いだったんだな。
 なんつーか、すでにゲーム前から敗北濃厚な雰囲気の中、マップ アレフガルド でゲームはスタートした。

 しょっぱな、妹がチャンスカードを引くと83番。
 83番はバシルーラである。

「いきなり飛ばすなーっ!」「やめんかーっ!」「ごめーん♪」

 開始早々、テンション激高である。私はへこんだままだったが……。
 ともあれ、いきなりとんでもないところに飛ばされたみんな。
 が、姉はマーク横のポジションで、サラリーを最短で狙える位置。
 弟もそんなに悪いところへは飛ばされておらず。

 ――が

 私は速攻で 竜王の島 へと飛ばされていた……。
 アレフガルドに浮かぶ 竜王の島 は、ラーミアのマスでしか移動できない特殊な位置にある。
 SFC版での竜王の島は2/8での確率でしか脱出できず、ハマってしまうことはあったが、このPS2版では8マス中3箇所に脱出ポイントがあり、そんなにハマることはない。
 確率で言えば、毎回 3/8 の確率で脱出できるのである。
 まぁ問題ないだろう、と思っていた……。

 次、姉がダイスを振る。チャンスカードを獲得し、なんとラーミアのマスへ。
 竜王様、竜王の島へ光臨。
 つか、こんな離れ小島で姉とふたりは嫌だ!
 ゲームとはわかってはいても、精神衛生上大変よろしくない!

 私は速攻でこんな島からオサラバしてしまおう、と決意したのだが……無情にもダイスはこの島へ留まれ、と命じていた。
 大丈夫、次は抜け出せるさ……。

 弟、妹と順調に店を建てて行く。
 姉の番、あっさりと 竜王の城 のマスへ止まり、購入。
 この竜王の城は凶悪で、モノポリーでいえば銀座に相当する。
 お店価格の平均がだいたい270〜350くらいに対し、この竜王の城だけは900もするのだ。
 当然、買い物料も非常に高く、止まってしまうとあっという間に資金を吸い上げられる。

 私の番。姉はささやいた。

「6を出せ。それ以外は許さん」

 無茶苦茶である。
 6をだせば姉の店、竜王の城に直撃ではないか!!
 序盤からこんな出費はしたくない。
 6よ、頼むから出るなっ!

 ・
 ・
 ・

 ……6でした。
 きっちり買い物料、180を巻き上げて行く姉の店、もとい竜王様。
 つか、また竜王の島から脱出できてないではないか。
 弟、妹は我関せず、マイペースで進んでいく。なんて憎い奴らなんだ。
 誰か、お兄ちゃんを助けてあげようとか思わないのか!

 姉の番。
 私がチャンスカードマスにしか止まれていないのを対照的に、着実にこの島に店を築いて行く2店舗目。
 同エリア内に店を構えると料金が上がり、危険度があがるのだ。やばい。

 私の番。
 もはやなんというか、お約束というか、所詮は経験値1の悲しさか。
 またもや姉の新店舗に突っ込みお支払い。
 姉、笑いが、勢いが止まらない。

 その後、あと2度ほど竜王の城へ突っ込みぼろぼろになった私。
 バックに流れるBGM、荒野を行く、がこれほど寂しい曲に感じたことはない。
 序盤から破産の危機に直面したまま恐怖の島を脱出。
 なんてこった。オルテガでさえ海を泳いで渡ったのに!
 所詮はスライム。所詮は雑魚キャラということなのか……。
 だが幸いにも島を回りまくったおかげで、マークは揃っている。
 脱兎の如く銀行へ走り、サラリーを貰って一息をつく私。

 だが、まだ破産の危機は続く。
 妹、弟が地道に築いた店を避けながら、なんとか自分の店を確保しなければならない。
 だが……なんとか致命傷を免れながら進めたものの、私自身はエリア内で2店舗以上を構えることができずジリ貧であった。
 対照的な姉は潤沢な資金と異様なまでのダイス運を活かし、速攻で竜王の城の株を買い増資。
 一歩リードどころか、二歩も三歩もリードで早くも独走態勢であった。

 中盤〜後半。私は株の相乗りや空き地の改築などでせこく資金を増やし破産を免れるものの、姉の独走をとめることはできない。
 弟、妹も 「あーあ、ゲームをつまんなくさせやがって」 的な目で私をみる始末。
 私か!? 私のせいなのか!? ダイスが悪いんじゃないかっ!!


 結局、1位姉、2位弟、3位妹、4位私、という結果で幕を閉じた。

「このゲーム、簡単すぎておもろないな……」 と姉。それはダイスが良すぎるんだ!
「スライム弱すぎ…・・・」 と弟。違う、それはダイスが悪いんだ!
「所詮、持ち金2ゴールドだよね……」 と妹。竜王なんか経験値どころかゴールドすらくれないじゃないか!!!

 あっさり終わったので2回目、3回目もプレイしたが、結局私はダイス運の悪さを引きずったまま、勝つことはできなかった……。


 完。



posted by BlueTasu at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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