2006年04月05日

No.21 かまいたちの昼

 本日は臨時休日。ぽかんと空いてしまった空白の一日。
 これはもう買ったばかりのユグドラ・ユニオンを1日中遊び倒すしかない、と思ったその時であった。

「○○くーん、あーそーぼー」

 いい歳こいたおっさんが、幼児的呼び声で人の名前を玄関先で叫ぶ。
 どうやって私の休日を知ったのか? (たぶん)友人である、タカが遊びにやってきた。

 こいつがかなりの曲者なのである。
 とにかく遠慮とか配慮というものが、産まれた瞬間に抜け落ちてしまっており、当然気遣いなどといった単語もタカの辞書にはない。
 それを裏付けるかのごとく、つい先日も、私がポートピア連続殺人事件をやっていると、その犯人の名前をいきなり暴露されてしまったという経緯があった。
 このとき、私は事件の真相など全然知らなかったのだ。
 推理モノの犯人を先に言う、という暴挙に、当然私が怒りまくったことは言うまでもない。
 そしてこのことは私の古傷となって、いまだ引きずっている。

「この間、お前がポートピアやってるのをみて推理ゲームしたくなってさ、かまいたちの夜を衝動買いしてしもたよ」

 しかし、タカはこちらの想いなどお構いナシに、古傷をさっくりエグる。
 貴様、ポートピアの一件に関する罪の意識はゼロかっ!
 私が再び激しい怒りを再燃しかけた瞬間、こちらの思惑など関係なしに、かまいたちの夜のことをベラベラと喋りだすタカ。

「お前、この犯人は何回目でわかった?」

 そして唐突にこの質問。
 私はこの質問に答えることなど出来ない。
 なぜなら、やったことがないからだ!

「は? お前推理モノ好きだって言ってたよな? ゲームも好きだよな? なのになぜ、かまいたちの夜をやってないんだ!」

 何故と言われても、やってないものはやってないのだから仕方がないではないか。
 それにかまいたちはやっていなくても、東野圭吾の推理作品の犯人と手口なら全て言えるぞ!(関係なし)
 そもそもこのHNだって東野圭吾の作品 『ブルータスの心臓』 からとってるんだぞ!(全く関係なし)

「やれ、今すぐ俺の目の前でかまいたちをやれ! そしてその無様な死に様を俺に見せろ!」

 そういってタカはGBA版のかまいたちの夜をさしだした。
 受け取らなければ犯人と手口など、全て語りだしそうな雰囲気だったので、私はしぶしぶながらもそれを受け取った。

 こうして、真昼間だというのに、私のかまいたちの夜が始まった……。


 DSに差し込んであったユグドラ・ユニオンのカートリッジを引っこ抜き、かまいたちの夜を起動させる。
 タイトルログの前に「チュンソフト」というタイトルを読み上げる声がきこえる。
 そういえば 『街』 も 『かまいたちの夜2』 もやったことがない。
 これが面白かったらちょっと考えてみよう。


 一面白銀の世界に、なおも吹き付ける吹雪。その只中にポツンと建っているログハウス。
 舞台はここ、シュプールという名のペンションらしい。

 私はゲームを始める前に、登場人物の説明を見た。
 “透”、という大学生の男性と、“真理” という名の、同じく大学生の女性が主人公とヒロインのようだ。
 あとはペンションの従業員や、そこに宿泊している人物の紹介が書いてあったが、これは本編を読み進めていけば覚えるだろう、と考え項目をとじた。
 後ろでタカが、そんなんあとでわかるからええがな、という苛立ちを含んだ目をして急かしていたせいもある。
 まったくもって推理ゲームをする環境ではない、と思ったが、やむを得ずタイトル画面から進みだした。


 ゲームをスタートする前に、ロード画面になった。
 本に記録する、という形をとっているらしく、新しく始めるためには本をいったん消去しなければならない。
 3つある本の中からどれを消せばいいのか、とタカに訪ねると、文章スキップの機能はないからロードで始めてくれ、と言う。

 私は1番目をロードし、新しく始める、と選んだ。
 すると画面にフクロウが現れ、

「ペンション『シュプール』へようこそ。お客様の名前は ○○様。おつれ様は 由美 様ですね。」

 と聞いてきた。
 ……確か主人公の名前は 透 だったはずだ。
 なのになぜタカの名前が入っているのか?
 そしてこの由美という女性の名前、確か半年ほど前にフラれた彼女の名前ではなかったか!?
 私はタカに目で訴えかけると、事態に気付いたらしい。

「すまん、何も言うな……」

 奴らしくなく、うな垂れながら呟いた。

「ああ、何も言わん」 (言わずに書いたが)

 私はそう言って、名前をそのままにしてスタートする。
 それを見て、タカは絶叫した。

「俺の名前でお前がやるなーっ!」

 私はあえて無視した。


 ・
 ・
 ・


 ストーリーはサクサク進む。
 当初、タカとフラれたハズの彼女とスキーをするシーンがあったり、部屋でいい雰囲気になったりしているシーンがあり、そのたびにタカは悶絶する。
 奴にも羞恥心というものがあったらしく、私がその名前で恥ずかしい選択肢を選ぶたびに身をむず痒そうによじていた。
 そうか、かまいたちの夜はこんなにも面白いゲームだったのか。(楽しむところズレすぎ)

 やがて第一の殺人が起こった。
 2階で窓ガラスが割れ、すぐ駆けつけたものの、その閉ざされた部屋にはバラバラの死体があったのだ。
 私はすぐさまタカに質問をぶつけた。

「なんでこんな早く死体をバラバラにできるんだ? 犯人は窓から逃げたと偽装したんだろ」

 もちろんタカから答えを期待したわけではない。
 というか答えを言われてしまっては、その後の楽しみがなくなって困る。
 だが伊達に沢山の推理小説を読んできたわけではない、ということが奴にもわかっただろう。
 この時点で、なんとなく犯人の目星はついた。

 そしてその目星は当たりらしい。
 その後の展開では、その犯人と思しき奴の言動が目に付いたし、挙句に第二の殺人を起こしてしまった段階で、その考えは確信に変わる。(ちなみに第二の殺人を起こる前にも解決はできたらしい)
 私は最初の殺人で起こった窓ガラスが割れる仕掛けこそわからなかったものの、私の推理と同様の推理をタカの名を騙る主人公が述べて行く。
 やがて事件は解決した。

「簡単だった」

 私の感想はこの一言に尽きる。

「おもしろくねぇええええ」

 タカは不満そうだ。
 どうやら私が推理に行き詰まり、オロオロする様を見たかったらしい。

「本当にやったことないのかよっ!」

 誓ってやったことはないのだが、タカは尚も納得がいかない様子。
 そんなに私が殺されるシーンが見たいのか……。
 仕方なくもう一度推理シーンからスタートし、わざと間違えた展開を選んでやる。
 すると、やはりというかなんというか、今度は人がどんどんと死んで行く。
 そして最後には、タカのフラれた彼女の名を騙るヒロインにスキーのストックで刺されて死ぬ、というバッドエンドに。
 見ていた本物のタカも、それこそ死んだようにピクリとも動かず、激しく落ち込んでいるようだった。

「ある意味面白い」

 私の新たな感想に、生ける屍と化したタカの返事はなかった。
 どうだ、これで過去をエグられる気持ちがわかったか!
 私は物凄く満足な気分であり、何かをやり遂げた男の顔でDSの電源を切った。


 おわり。




posted by BlueTasu at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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