2006年10月19日

No.212 大変な1日 後編

注:これは後編です。
 まだ前編を見ていない方は No.211 の前編を見ていただいたほうがより楽しめる(?)かと思われます。


 そんな注意書きから始まった後編。
 ハルちゃんを我が家に招き、とうとう我が部屋へと足を運ぶ。
 片付けた。うん、片付けたんだけど……。

「いや〜!! なんか不潔〜!」

 みたいなことを言われちゃったりしたらどうしよう、と思う次第。
 いや、間違ってもそんなこと言わないとわかってはいるんだけど……。

「ヤバイ本は大丈夫か?」

 脳内から聞こえて来るタカの声。大丈夫です!!
 さすがに天井裏までは覗かないでしょ。

「ふふふ〜。楽しみだな〜」

 ハルちゃんの笑顔が非常に怖い。
 その笑みが凍り付きませんように……と願いつつ扉をオープン。

「お〜、広いっすね〜」

 お決まりとなった第一声。

「私のワンルームマンションが馬鹿みたいだよ」

 そりゃこっちは田舎ですもん。

「あるのはお馬さんのポスターなんだね。
 好きなアイドルのとか張ってるのかと期待したのに〜」

 そんなんおりまへんがな。

「結構片付いてるんだね。いつもこんな感じ?」

 ……汗。

「えっちぃ本はどこに隠したの?」

 ……滝汗。

「ゆうさんが、まずはベッド裏を見ろ、って言ってたけど」

 そんなベタな。

「でも本がいっぱいだねー」

 読書の秋だからね。(違

「地震起きたら全部崩れるんじゃない?」

 不吉な予言をしないように。ちゃんと本棚は金具で固定してますがな。

「おー、これ、ボトルシップってやつ? かっこいいね」

 某主人公ではないので、触られても気にしまへん。

「CDとかもいっぱいだね〜。DEEN がいっぱいだぁ」

 そりゃもうファンですから。

「KinKi Kids はないの?」(←ファン)

 妹なら持ってる。

「なんか、面白いね〜」

 左様でございますか。

 こんな調子で部屋を見回るハルちゃん。
 私は落ち着かないけど、とりあえず窓際に腰をかけた体勢で、見られるがままにしておいた。
 なんというか、自分の部屋を見られる、というのは胃に悪いね。
 腰をかけた窓枠が、古いからギシギシ言ってるけど、そんなの気にならないくらい緊張し、身構えていた私であった。

 で、一通り見て落ち着いたのか、その隣に腰を下ろすハルちゃん。
 カフェオレを飲みつつ、例の怪しげなプリッツもどきを食べる。

「これ、何味なの……?」

 悪くはないが、なんだか不思議な味であった。
 ほどなくしてプリッツもどきも食べ終わり、カフェオレも飲み終わる。
 
「で、我が家はどないですか?」

 とりあえず気になっていたので感想を窺う。

「思ったよりおっきいから圧倒されっちゃったっすよ。うーすけくんは可愛いし、面白いね。子供のとき来てれば、絶対かくれんぼしたくなるよね〜」

 隠れたまま発見されずに放置されるくらい、隠れ場所は豊富だよ……。
 微妙に忘れ去りたい過去を穿り返され、へこむ私。

「私も鬼だったときに、見つけられなくて帰っちゃったことあるなぁ」

 お前だ!! お前のような無責任な奴がいるから私みたいな繊細な子が小さい頃に傷つくんだーっ!!

「私じゃないけど、ごめんなさいーっっ!!」

 謝るハルちゃん。
 なんだか知らんが、妙なところで昔の過去に決着がついた。

「めでたしめでたし」

 お前が言うなよ……。

 ・
 ・
 ・

 そんな感じでくだらない話で盛り上がり、いつものペースになっていく。
 私たちはくだらない会話で時間を潰すのが好きなのだ。
 時には口論になっちゃうこともあるけれど、今日はそんなこともなく、穏やかな時間が流れていった。

「静かだねー」

「今日は誰もいないからねー」

 そんななか、なんつーか、不意に緊張する瞬間が訪れた。
 そういや誰もいない家の中、私の部屋に女性がいるというシチュエーションなわけで……。
 唐突に沈黙、静寂。
 この展開は、もういっとくべきなんだろうか、などと頭の中で目まぐるしくまわり始める私。

 ――が

 ドゥルンドゥルンと遠くから聞こえてくる排気音がその静寂を打ち砕いた。
 そしてその音はだんだんと大きくなっていく。
 まずい……まさか……そのまさかである。
 TRXに跨って、姉が帰ってきたのである……。

「うっわー。おっきなバイクだね」

 もはやこの日、何回目の「おっきいね」発言だったかはわからないが、窓から身を乗り出して姉のバイクに見惚れるハルちゃん。
 私も窓枠から身を乗り出して固まった。
 もう滝のような汗が背中を滴り落ちている。

 ヘルメットを脱いだ姉は、さっと2階を、私の部屋を仰ぎ見た――瞬間、目が合う。
 終わった。なんつーか、色々終わった……。

 でも何故? 姉は今日は勤務日だったハズで、いつもなら夜の8時。遅ければ10時くらいまで帰ってこないのに!
 現在の時刻は昼の3時半。
 もう学校が終わっている時間なので、そろそろ妹と弟がヤバイかな、とは思っていたのだが、まさか姉がここで帰ってくるだなんて計算外もいいところである。
 そうこうしているうちに階段を上ってくる足音が聞こえて来る。

「えっと、あの人がお姉さんなんだよね?」

 ハルちゃんは私の真っ青な顔色を覗き込みながら言った。
 平時ならそのままキスでもかましたいくらいだったが、今の私にそんな心の余裕はない。

 ――ガラッ!!

 ノックもなく開くドア。
 そこには姉が仁王立ち。
 怖いから、怖いから!!

「弟が世話になってるようで」

「あ、始めまして。ハル(一応本名を名乗ったけどここではハル、で)って言います」

「なんか不埒なことはされへんだか?」

 ハルちゃんが自己紹介した次のセリフがそれであった。
 不意をつかれたのか、ぽかーんとしているハルちゃん。
 で、言葉の意味を理解し赤くなってうつむくハルちゃん。

 ――で、その行為を誤解する姉。

「この不埒もんがーっ!!」

 いきなりキック。いきなり顔面に蹴り。
 そりゃこっちは座っているので、完全に回避不能なわけで。
 そして忘れてはならないのが、私は窓際にいたということ。

 めきっ。

 時代を感じさせる古い窓の木枠。
 それ自体になんら罪はないのだが、姉の蹴りで吹っ飛ばされる私の体重を支えてくれるには、ちょっと無理があった模様。

「うおおっ!?」
「きゃあああッッ!!??」

 ハルちゃんの悲鳴、初めて聞いたなぁ。
 などと暢気なことを考えられるほどスローモーションで2階から転落。
 幸い、夏に頑張って伸びてくれた雑草が私を受け止めてくれたおかげで、大事には至らず、だが……。

「Blueさん、大丈夫!!?? って、イヤアアッ!! お姉さん、誤解ですっ! 何もしてません! してませんしされてませんからっっ!!」

 さらに上から本を投げつけようとしていた姉に、すがり付いて止めてくれる勇敢なハルちゃん。
 ちなみに私は、雑草が受け止めてくれたとはいえ無傷とは言えず、蹴られた顔面を抑えながら苦しみにのたうちまわっていたのでありました。

 普通、死ぬから。

 限度というものを知らない人。それが姉である。

「ただいまー。お兄ちゃん、庭で転がって何してんの?」

 帰宅早々、苦しんでいる私を楽しそうに木の枝で突っついてくる妹。
 もうやだ、こんな家……。

 ・
 ・
 ・

「……ごめんね、私が家に行きたいって言ったばっかりに」

 帰りの道中、落ち込み、しきりに謝るハルちゃん。
 間違ってますから。謝らないといけないのはハルちゃんじゃないから!

 家を出たいなぁ、と本気で思った1日が、こうして終わったのでありました……。

 どなたか、良い物件しりませんか?(マジ)



posted by BlueTasu at 00:00| Comment(9) | TrackBack(0) | 日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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